犬を飼う上で、フィラリア症の予防はもはや常識となりつつあります。毎年欠かさず行っている飼い主様も多いでしょう。そんななかで、実はよくわからないこと、不安なこと、困っていることはありませんか?
今回は、そんなお悩みを解消し、より快適な予防を行えるよう、改めてフィラリア予防についての理解を深めていきましょう。
1.犬のフィラリア症は予防で防げる!
そもそもフィラリア症って?
フィラリア症とは、寄生虫の一種であるフィラリアが動物の体内に入りこみ、成長して心臓に寄生することで悪影響を及ぼす病気です。寄生の仕組みや症状について詳しくお知りになりたい方は、こちらの記事をご覧ください。
年ごとの確実な予防で愛犬を守る
犬のフィラリア症は、重症化すると命にかかわります。その一方で、対策が確立されているため、正しい知識があれば感染自体を確実に防ぐことができます。毎年欠かさず予防を行いましょう。
2.フィラリア予防はいつから始めるの?
蚊の活動に合わせて予防を開始
フィラリアは蚊から感染するため、蚊の活動期間に合わせて予防を行うことが効果的とされています。蚊の活動が活発になる4・5月からスタートし、活動が停止する11・12月まで、毎月予防薬を与える方法が多くとられています。
通年予防というニュースタンダード
しかし近年では、時期を限定せず1年を通して予防を行う「通年予防」が標準化しつつあります。気候の温暖化により、蚊の活動期間が長くなっていることが理由の一つです。米国のフィラリア症学会や食品医薬品局も、通年予防を強く推奨しています。
ビルやアスファルトが多い都市部は、昼間の熱が夜までこもりやすく、気温が高いまま。こうした「ヒートアイランド現象」によって、蚊が活動しやすい環境が長く続き、フィラリア感染のリスクも高まります。研究によると、郊外や農村部に比べて、都市部では蚊が長く生きる可能性があるそうです。また、蚊の体内のフィラリアは、低い気温下では発育を停止しますが、気温が上がるとすぐに再開するとも言われています。
そもそも「冬には絶対に感染しない」というわけではありませんので、通年予防は感染リスクを限りなくゼロに近づける有効手段です。
予防薬を与えるリズムが一定になるため、飼い主様のうっかりを防ぐメリットもあります。
はじめての予防はいつから?
子犬を迎えた場合は、いつから予防を始めれば良いのでしょうか。
フィラリアの予防薬の多くは、生後42~56日から使用可能です。生まれた時期が春~秋であれば生後2か月頃から、冬であれば次の春から予防薬を与えることで、十分な効果が得られると考えられます。
3.薬を始める前に、必ずフィラリア検査を
そもそも病院に行かなきゃだめ?
薬だけで予防できるのなら、市販薬ではだめなの?と思われる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。実は日本では、フィラリアの予防薬は市販されていません。獣医師の処方以外では購入できない、「要指示医薬品」というものに分類されます。
それなら、診察や検査を受けずに薬だけもらいに行きたい。こんなお声もよく耳にします。これも絶対にNGです。フィラリアの予防薬を始める際には、フィラリアに感染していないことを確認する必要があります。
検査をしないと死の危険も
フィラリアの予防薬は、フィラリアの侵入を防ぐのではなく、血液中に入ってしまったフィラリアの幼虫を駆虫します。成虫になると心臓に寄生し害を及ぼすため、幼虫の段階で食い止めるのが目的です。
では、すでにフィラリアに感染しており、成虫が体内にいる場合はどうなるでしょう。感染に気付かないまま予防薬を投与すると、成虫が産んだ大量の幼虫が一気に死滅します。これによってショック状態となり、最悪の場合死に至るのです。そのため、必ず検査を行ってから予防薬を処方します。
当院での検査方法
当院では、「キャナイン-フィラリアキット」を使ってフィラリアの感染有無を確認しています。少量の血液で検査が可能で、所要時間も5分程度です。
4.愛犬にぴったりの予防薬を選ぼう
おやつ感覚のチュアブルタイプ
フィラリアの予防薬にも、様々な種類があります。それぞれメリットが異なるため、愛犬と飼い主様に合ったものを選ぶと良いでしょう。
チュアブルタイプは、噛んで食べられる、おやつのようなお薬です。ワンちゃんが好むフレーバーで、食べることが大好きな子にはぴったり。食物アレルギーのあるワンちゃんに与えるには注意が必要ですが、基本的にはワンちゃんにも飼い主様にも負担が少ないため、迷ったときはチュアブルタイプを選ぶと良いでしょう。当院では「シンパリカトリオ」をご用意しております。
シンパリカトリオは、フィラリアに加えてノミ・マダニ・ミミヒゼンダニや、消化管内寄生虫の予防が可能なオールインワンタイプ。価格は1ヶ月分で3,000~4,700円(税別)と、マルチな効果をもつ予防薬のなかではかなりお手頃です。当院では、ほとんどの飼い主様にお選びいただいております。
また、予防薬はまとめ買いがお得です。当院では、9ヶ月分ご購入で1ヶ月分が、12ヶ月分ご購入で1.5ヶ月分が無料になります。お得なまとめ買いで、通年予防を始めましょう。
お薬嫌いでも大丈夫、スポットオンタイプ
慣れないお薬を口にしてくれない場合、スポットオンタイプがおすすめです。毛をかき分けて、薬液を皮膚に塗ります。塗ってから一定時間経てば、シャンプーも可能です。ただし、皮膚が弱いワンちゃんには使用できません。
当院では、同時にノミの予防もできる「レボリューション6%・12%」をご用意しております。価格は1ヶ月分で1,900~4,200円(税別)です。
アレルギーでも安心な錠剤タイプ
錠剤タイプは、アレルギーのあるワンちゃんにも使用できます。ごはんに混ぜて食べさせるか、直接喉の奥に押し込んで飲み込ませます。神経質な子だと与えるのに苦労するかもしれませんが、他の錠剤に比べると小ぶりで飲ませやすい仕様です。一方で、ノミ・ダニ・消化管内寄生虫には効果がないため、他の予防薬と併用する必要があります。
当院では、「パナメクチン」をご用意しております。価格は1ヶ月分で900~2,500円(税別)です。
年1回でOK、注射タイプ
注射でのフィラリア予防も可能です。効果が1年間持続するものもあるため、確実な通年予防ができるのが大きなメリットです。ただし、錠剤と同様に、フィラリア以外の寄生虫には対応していません。
当院でのお取り扱いに関しては、スタッフにお尋ねください。
さまざまな予防薬があるなかで、選択に悩まれる方も多いかと思います。そんな方には、フィラリアに加えて、ノミ・マダニ・ミミヒゼンダニ・消化管内寄生虫の予防が同時に可能な「シンパリカトリオ」をおすすめしております。
おやつのように与えやすく、嗜好性も高いため、投薬が苦手なワンちゃんでも続けやすい点が大きな魅力です。また、1つのお薬で幅広い寄生虫対策ができるため、より確実で負担の少ない予防が可能になります。
当院でも、多くの飼い主様にお選びいただいている実績のあるお薬です。迷われた際は、ぜひシンパリカトリオでの通年予防をご検討ください。
5.予防の効果を確実にするために
確実な予防のため、月1回の投薬をしっかりと行う必要があります。また、回数が守られていても、薬の量が足りていないと十分な効果が得られないため、体重に合わせた処方が大切です。
他にも、「予防薬を与えた後に嘔吐してしまった」「薬を塗った皮膚が腫れてしまった」「妊娠したため予防薬を与えて良いかわからない」など、不安な点はすぐに獣医師に相談しましょう。
大切な愛犬の健康を守るために欠かせないフィラリア予防。しっかり理解を深めることで、新しい選択肢や、意外な危険に気づくことができるかもしれません。クロス動物医療センターでは、予防診療にも力を入れております。どんなことでもお気軽にご相談ください。